(個別記事)第六章 「海岸における順応的管理とはなにか?
著者:松田裕之
第六章 「海岸における順応的管理とはなにか?
オリンピック漁業と個別漁獲割当量制度(IQ制度)について
どちらもTACは守っている
全体に設けられた大きな漁獲枠さえ守ればいい、先に現れた未成魚も後から現れた成魚も両方獲ってしまえば獲っただけ儲かる早い者勝ち:オリンピック漁業
漁業者ごとに漁獲枠を割り当てられているので、成魚を待ってから獲る:IQ制度
ほか:譲渡可能個別割当量制度(ITQ制度)
漁獲枠を超えそうな漁業者が枠を満たさない漁業者から漁獲枠を買い取ることができる
乱獲は経済的に合理的である
経済的割引:将来の利益を現在の同じ金額の利益に比べて割り引いて考える
毎年MSYの漁獲量ずつ漁獲する場合と、一度にすべて漁獲する場合とでは、(計算過程省略)MSYよりも短期間の利益のほうが現在価値が高くなる
共有地の悲劇:1960年、G・ハーディンにより提唱
生物資源を複数の者が利用できる場合、自分が乱獲しなくても誰かが乱獲すれば数が減るので、他者に乱獲されるくらいなら自分も乱獲したほうが利益を得られる
漁場が自由参入であると、共有地の悲劇が生じやすい。日本では、沿岸資源はその地域の漁業協同組合のみが漁獲できる「共同漁業権」がある。これは共有地の悲劇を防ぐ効果がある。しかし、沖合は自由参入である。自由参入でなくても、複数の者が利用する場合には、MSYは経済的な最適解ではなくなる。経済学のゲーム理論でいう「非協力解」では、資源量を環境収容量Kの半分に維持する状態がMSYの場合、2者で利用するとKの三分の一まで減らす状態になる。3者なら四半分、N人ならN+1分の1に減らす。
松田裕之・森光代(2009)「個体群から群衆へ―――新たな漁業管理の視点」近藤倫生、大串隆之、椿宜高(編)『群衆生態学 第六巻 新たな保全と管理を考える』京都大学出版会、1~26頁
後で調べておいてください